Monthly Archives: April 2012

Eureka


Eurica にはキャンプ場があった。勿論、水の便はない。
でも、なんとトイレがあった。

20120420-IMG_1700.jpgさっさとテントを張って、暮れようとしている夕陽を捕らえたかった。
そこへ、 白い砂埃をたてて一台の車が近づいてきた。
う、う~、誰も近くに来て欲しくないな。
明朝は日の出前に出かけたいから、騒がれたくないし。

はたしてドアを開けて出てきたのは、シンディ ローパーとリーズ ウェザースプーンを限りなく崩し、ドハデにしたような若い女の子達だった。

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「これがあなた達のテントなの?」アクセントのある声で聞いてきた。
質問の意図がわからず、「何処から来たの?」と、無難な質問で返事した。
「フランクフルト。」
どおりで英語が少しおかしいと思った。
その後は、今後の行き先、ホテル情報、などなど、すっごく不思議な質問をしてきた。

そもそも、すでに日は傾きかけている。そして、ここは普通の観光客は来ない所だ。
道に迷って来られる所ではない。計画して来る所だ。いぶかっている私。

それとは正反対に、ばんちゃんはすごく親切に、道の説明やら、場所の説明をしてあげていた。まあ~、かわいい女の子にはデレデレしたいんだよね。

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でもー、私たちはこれから砂丘に登って写真を撮るんだぞ。時間が無いんだぞ!
いざとなったら、私一人で砂丘に登る覚悟をしていた。この期に及んで夕陽を見逃すことなんて、考えられなかったから。

せっせとテントの準備とカメラの準備をしていたら、彼女達はホコリをたてて去っていった。
それはそれで、非常に心配になった。気をつければ夜でも大丈夫なはずだけど。

20120420-IMG_1703.jpg砂丘の上は、まるで真空管の中にいるような静寂さだった。
見えるものすべてが息を呑む。何をどう撮ったらいいのかわからない。
旅から帰ってきた今でさえ、写真の編集をどうしたらいいのかわからず、すべてそのままだ。
美しいものは、ただ美しい。

バックカントリー


Racetrack を後にして、いよいよばんちゃんにとっての山場、バックカントリーの山道へと向かう。20120420-IMG_1381.jpg

ここから先は地図には載っていない。
Saline Valley Road まで約7マイル、約1.5 時間かけて通り抜けた。

すでに華氏110度を超えていた。途中でトイレに立ち寄ったが、目の前で蒸発していく。

ふと見ると、トカゲのようだ。こんな炎天下でも彼らは戦えるのだ。

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ばんちゃんは狂喜して、ワイドレンズを使っていた私に近づかないように警告した。
でも、彼がズームレンズを準備している間、消え去っていた・・・しばらく険悪な状態となる。

「ワイドじゃ絶対に撮れないって言ったじゃない?」
「こんなチャンスは2度とないかもしれない・・・」
ごもっとも。返す言葉もない。

私が捕らえた画像は、このように、かろうじて何かが見えるほどのお粗末なもの。

Saline Valleyの砂丘も過ぎて、いよいよSteel Pass Road に入る。
標識はないから、GPSコーディネートで確認が必要だ。

依然としてデコボコ道で疲れる。
でも、何やら白い地帯が前方に見える。そして、そこだけが緑色だ。
そうこうしているうちに、黄色いセスナが丘の上の方に見えた。
む・む・む・・・飛行場?
どんどん近づいていくと、なんと温泉だった。
荒地の真っ只中に温泉だ~!20120420-IMG_1476.jpg
しかも、ヌーディストの温泉らしい。
そっか。ここは自家用飛行機で来る、かなりプライベートな温泉場だったんだ。
残念ながら、残された道の事を考えて先を急いだ。

さて、ここから先はEureka まで、約30マイルの Steel Pass が本格的に始まる。
まさに難易度の高い道となる。

次の山、次の山かな・・・と期待が高まっていく。
そして、ついに砂丘の頭の先が見えた。20120420-IMG_1640.jpg
その時の感動は・・・ずっと大切にしたい。私の大切な宝物だ。

書きたいことは山ほどある。
ありすぎるから、90 秒弱にまとめたビデオが一番いいかもしれない。

 

動かない動く石


190号線を北上し Scotty’s castle road をさらに北上する。
舗装道路は Ubehebe Crater に行く道あたりで終了する。
クレーターは大きいが、あまり鑑賞の仕方がわからず、さっさと先を急ぐ。

その後、Teakettle Junction のサインまでデコボコ道を延々と2 時間ほど走る。味気の無い風景と激しい揺れが、よけい長く感じさせる。サインを見てからは、ワクワク度が高まる。
そして。。。突然遥か彼方に違った景色が見えてくる。
あの白い部分は何?あのポツリと黒く見えるものは何?

答えを待つまでも無い。
謎の「動く石」のある場所、 Racetrack Playa なのだった。
黒い部分は、Grandstand と言われるPlaya の中にある岩の山だ。
人はほとんどいない。4WDでないと、来られないからだ。

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午後4時。暑いピークだ。
私の風邪も気になるし、とりあえずはキャンプサイトの物色を始める事にした。

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Racetrack から2マイル以内はキャンプ禁止だが、その他は、何処でもいい。

この規則、なんだか不思議だ。
規制社会どっぷりから、何処でもいいという感覚。
大自然を前にして躊躇する。
ともあれ、手ごろな場所を発見。
荷物を下ろしてテントや夕食の準備をしはじめた。

・・・と、黄色いすずめが舞い降りてきた。
これは・・・水を求めてきたのかな・・・と思った。
そして、ガラパゴス諸島の旅行中のことを思い出す。
水のない島の鳥は、遠くからでも水を察知する。だから水ボトルをバッグから出すのも禁止されていたからだ。
ここも、砂漠。 まさに水が無い。

ところが、どうやら様子が違うようだ。
車の窓ガラスに映る自分の姿と格闘していたと思ったら、ばんちゃんの足に飛び降りてきた。

結局、翌日テントを撤収するまで立ち去らなかったので、ビルと名づけた。

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星が降る山間の丘で寝た。
高校の山岳部の時以来だ。
そして、岳人の歌を思い出した。

星が降るあのコール グリセードで~
あの人は来るかしら 花をくわえて~
アルプスの黒百合 心ときめくよ~

人の記憶は、やはりどこかに格納されているんですね。忘れるんじゃなくて。

翌朝は日の出前に Racetrack に行く予定だったが、昼ごろまで寝ていた。私の体調が依然として思わしくなかったからだ。

だからか、思い描いていたショットは撮れなかった。ま、あの状況下では、こんなもんでしょ。

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ただ、あの炎天下、あの平地を2-3マイル歩いた後、不思議に元気が出てきた。
風邪菌がたまげてどこかに行ってしまったのかも知れない。

未だに科学者の検証がされていない「動く石」。
たくさんあった。
動いた後にできる「石跡」の線が、まっすぐだったり、うねっていたり。
どんな理由でも、わからないままでも誰も困らない。
だったら、そのまま謎のままでいい。

石跡をつけた石たち。
動いているところを見たことのある人は、まだいない。

「動く石」は、じっと、存在していた。