Santa Fe ダウンタウン、オキーフの美術館近くにある、TerraCotta wine bistro とうレストランで夕食をとりました。今まで質素な食事をしていたので、この夜は、ちょっと気取ってここに来ました。
パティオに座っていたのに虫が全然いない。この時点で、軽く五十箇所ぐらい虫に刺されていた私には、それだけで感動。あ、勿論、ワインも食事もおいしくいただきました。
そこで知り合った老夫婦。隣の席の彼らと意気投合してしまい、なんとご自宅に招待されました。
翌日、St. Francis ホテルに開設されたばかりのGruetテイスティングルームで購入したボトルを持って伺います。5エーカー以上(約21万坪)もある広大な土地の頂上に立つお屋敷からは、360度の豪華な景色が楽しめます。
ご主人は元サンフランシスコシンフォニーのヴァイオリニストです。40年の演奏活動の末、肩を痛めて引退され、同時にSanta Fe に引っ越して来られました。知り合ったばかりの私たちを、こんな風に招待しちゃっていいの?
コンサートツアーで日本にも何度かいらしたことがあり、小澤征爾には毎晩のようにパーティーでもてなしてもらったとのことでした。小沢さんと同じ日本人の私。だからでしょうか?ベイエリアが懐かしかったからでしょうか?
ポイントごとにある猫とヴァイオリンの置物。彼らの大切な生活の一部です。
キッチン。もう暗くなっていたので、いい写真が撮れなかったのが残念です。家の中は、スポットライト形式の照明なので、尚更苦しい。
彼女は元小学校の先生でした。今は美術館のボランティアを週に2度ほどしているとのことです。これが彼女の書斎。
リビングの奥に座っているのがご主人のエンリク。絵の中の一部のようにスッポリ収まってます。
家の中を見せてくれながら昔のエピソードを色々話してくる奥さんのライラさん。おそらく、80歳に近いかも。でも美しかった若い頃が想像できます。今でもフェラーリを運転するネブラスカ出身の、元気で気さく、チャーミングな方でした。
こちらは、イタリア、ヴェネチアで購入したヴァイオリンの置物です。その際の逸話。
「ゴンドラに乗りたい」と、ライラ。
「乗るだけでこんなに高いなんて!そんなお金はないよ」と、エンリク。
その後、近くのショーウィンドウにこの置物を発見します。
「これは買うしかないよねー」とエンリクが言います。
「ジョーダンでしょ。数字がいくつ並んでるかみえてないんじゃない?ゴンドラに乗るのが高いって渋ってくせに~!」目玉が飛び出るくらいの値段を指してライラが反撃します。
そんな彼らの会話を聞いていたお店の人。
「このヴァイオリンを買ったら、ゴントラ一日貸切のサービスをつけてあげられますよ。」ということで丸く収まったというお話です。
ご主人のエンリクはアルゼンチンで育ったイタリア人。実は彼らとの会話をビデオにも収めました。彼の英語はアクセントが強くてよくわからなかったからです。そして、これが彼が使っていたヴァイオリン。真っ暗な中でなんとか撮れた一枚。大切に保管されていました。
敷地内にはゲストハウスもあります。「Santa Fe に来たくなったらいつでも来てね」と、言ってくれたライラの言葉に、少し涙ぐんでしまいました。
こんな風に初対面でご自宅にまで招待されたことは、私の長い人生で2度目です。人が人を信じるのって、経験である程度じょうずになれそうです。でも、それを見知らぬ人に実行するのはエネルギーが必要でしょう。勿論、私たちははすごく誠実で、悪い人間じゃないですよ。それを見抜いてのことと思います。でも、私が彼らの立場だったらどうしてたかなと思うと、彼らの度量の大きさが伺えます。
私たちの老後はどんなになっていたいんだろうと思いを馳せ、そんなに先の話じゃないんだと再確認したのでした。