190号線を北上し Scotty’s castle road をさらに北上する。
舗装道路は Ubehebe Crater に行く道あたりで終了する。
クレーターは大きいが、あまり鑑賞の仕方がわからず、さっさと先を急ぐ。
その後、Teakettle Junction のサインまでデコボコ道を延々と2 時間ほど走る。味気の無い風景と激しい揺れが、よけい長く感じさせる。サインを見てからは、ワクワク度が高まる。
そして。。。突然遥か彼方に違った景色が見えてくる。
あの白い部分は何?あのポツリと黒く見えるものは何?
答えを待つまでも無い。
謎の「動く石」のある場所、 Racetrack Playa なのだった。
黒い部分は、Grandstand と言われるPlaya の中にある岩の山だ。
人はほとんどいない。4WDでないと、来られないからだ。
午後4時。暑いピークだ。
私の風邪も気になるし、とりあえずはキャンプサイトの物色を始める事にした。
Racetrack から2マイル以内はキャンプ禁止だが、その他は、何処でもいい。
この規則、なんだか不思議だ。
規制社会どっぷりから、何処でもいいという感覚。
大自然を前にして躊躇する。
ともあれ、手ごろな場所を発見。
荷物を下ろしてテントや夕食の準備をしはじめた。
・・・と、黄色いすずめが舞い降りてきた。
これは・・・水を求めてきたのかな・・・と思った。
そして、ガラパゴス諸島の旅行中のことを思い出す。
水のない島の鳥は、遠くからでも水を察知する。だから水ボトルをバッグから出すのも禁止されていたからだ。
ここも、砂漠。 まさに水が無い。
ところが、どうやら様子が違うようだ。
車の窓ガラスに映る自分の姿と格闘していたと思ったら、ばんちゃんの足に飛び降りてきた。
結局、翌日テントを撤収するまで立ち去らなかったので、ビルと名づけた。
星が降る山間の丘で寝た。
高校の山岳部の時以来だ。
そして、岳人の歌を思い出した。
星が降るあのコール グリセードで~
あの人は来るかしら 花をくわえて~
アルプスの黒百合 心ときめくよ~
人の記憶は、やはりどこかに格納されているんですね。忘れるんじゃなくて。
翌朝は日の出前に Racetrack に行く予定だったが、昼ごろまで寝ていた。私の体調が依然として思わしくなかったからだ。
だからか、思い描いていたショットは撮れなかった。ま、あの状況下では、こんなもんでしょ。
ただ、あの炎天下、あの平地を2-3マイル歩いた後、不思議に元気が出てきた。
風邪菌がたまげてどこかに行ってしまったのかも知れない。
未だに科学者の検証がされていない「動く石」。
たくさんあった。
動いた後にできる「石跡」の線が、まっすぐだったり、うねっていたり。
どんな理由でも、わからないままでも誰も困らない。
だったら、そのまま謎のままでいい。
石跡をつけた石たち。
動いているところを見たことのある人は、まだいない。
「動く石」は、じっと、存在していた。